みなさんこんにちは。sakucame Blog sakuです。
カメラを始めた人から何を聞かれるかというと、だいたいISOです。
F値はまだ想像がつきます。シャッタースピードも、速いとブレない、遅いとブレる、でとりあえず形になります。
ISOだけが最後まで残るんですよね。
今日はそのISOの話を、遠回りせずにまとめておきます。後半はISO64やISO50の正体と、私の小言です。気になる方だけ読み進めていただければと思います。
ISOはもともとフィルムの箱に書いてあった数字です
ISOというのは国際標準化機構の名前だそうです。
カメラ用語っぽく見えますが、規格団体の略称がそのまま居座っているだけなんですよね。
もともとはアメリカのASAとドイツのDINという2つの規格が別々に使われていて、それを国際標準化機構が1本にまとめたのがISO感度。
中古カメラ屋に行くと、古いフィルムの箱やレンズの刻印に「ASA100」という表記が残っています。あれがISOになる前の呼び方です。
ちなみに、ASA100と聞いてピンとくる方は、この記事の前半はまるごと飛ばして大丈夫です。
その世代の方に「ISOとはなんぞや」を説明するのは、さすがに釈迦に説法なので 笑
ここで大事なのは、ISOがフィルム自体の性能を表す数字だったということです。
ISO100のフィルムを入れたら、そのフィルムを撮り切るまでISO100です。
暗くなってきたから400にしたい、は通りません。フィルムを買い替えるという意味でした。
だから当時は、今日は屋外だから100、今日は室内だから400、と先に決めて外に出ていたわけです。現像で無理やり持ち上げる増感という技もありましたが、あれは最後の手段です 笑
デジタルになって、この数字を1枚ごとに変えられるようになりました。
地味に、これが一番大きい変化だと思っています。フィルム1本ぶんの覚悟が、ダイヤルひと回しになりました。
ISOを上げたときに増えているのは、光ではありません
ここがISOのいちばん大事なところです。
ISOを上げても、カメラに入ってくる光の量は1ミリも増えていません。
増えているのは、センサーが受け取った信号の音量です。
ラジオのボリュームだと思ってください。
小さい音で録れてしまった音声のボリュームを上げると、声は聞こえるようになります。でも一緒にサーというノイズも大きくなります。
ISOはこれと同じことをしています。だから数字を上げれば写真は明るくなるし、同時にノイズが出てザラつきます。
光を実際に増やしているのは、F値(絞りを開けて光の入口を広げる)とシャッタースピード(光を受ける時間を長くする)のほうです。
ISOは、その2つで足りなかったぶんをあとから音量で埋める係です。
だからISOの正しい使い方はシンプルで、F値とシャッタースピードを先に決めて、それで暗かったぶんだけISOで持ち上げる、になります。
で、結局いくつにすればいいのか
いちばん聞かれるのはここなので、先に目安を置いておきます。
・晴天の屋外:ISO100〜200
・曇り、日陰、夕方:ISO200〜400
・明るい室内、カフェの窓際:ISO400〜800
・夜のスナップ、暗い居酒屋、ライブハウス:ISO1600〜6400
・三脚を立てた夜景、滝の長時間露光:最低感度(ISO100やISO64)
そして現実的な答えがもう一つあります。
オートISOにして、上限だけ自分で決める。
これで9割の場面が終わります。ISOを1枚ごとに手で合わせるのは、動かない被写体を三脚でじっくり撮るときくらいで足ります。
で、その上限を何にするかですが、ここは他人の数字を借りてこないほうがいいです。
自分のカメラのノイズを、自分がどこまで許せるか。
決め方はこれだけです。
同じISO6400でも、カメラによってノイズのノリ方は全然違います。そしてそのザラつきを味だと思う人もいれば、無理だと思う人もいます。ここは画質の良し悪しではなく、好みの話なんですよね。
いちばん手っ取り早いのは、夜のスナップに出て試してみることです。
同じような場所で、ISOを1600、3200、6400、12800と変えながら撮ってみる。そして家に帰ってから、大きいモニターで並べて見る。
そこで「ここから先は嫌だな」と思った一段下が、ご自身の上限です。
一度やっておくと、あとはカメラに任せて撮れるようになります。地味にこれが、いちばん写真が安定する作業だと思っています。
ついでに、試しているとたまに面白いことが起きます。
機種によっては、ISOを上げたのに逆にノイズが減る段があります。センサーの回路が高感度向けに切り替わるポイントがあって、そこを超えると暗部が急にきれいになるんです。デュアルゲインと呼ばれる仕組みです。
これもカタログには書いていないので、並べて見ないと気付きません。自分のカメラで確かめるしかないんですよね。
初心者のうちは、ISOを渋ってブレた写真を量産するほうがもったいないです。
ノイズは残りますが、ブレは残りません。ブレた写真は現像でもどうにもなりません。
最近は、写真編集ソフトにノイズ低減機能とかもついてますし。
「ベース感度」を覚えると、ISOの表記が一気に読めるようになります
カメラのスペック表に、常用感度と拡張感度という2つの書き方があります。
ここを分かっておくと話が早いです。
常用感度は、メーカーが画質に責任を持てると言っている範囲です。
拡張感度は、その範囲の外に無理をして足した番外編です。
この拡張感度というのは、センサーの感度そのものを変えているわけではありません。
ベース感度で受け取った信号を、あとから処理で引き下げたり押し上げたりして、その数字に見せているものです。
下に伸ばす拡張(ISO50やISO64)は信号を引き下げているので、ハイライトの余裕がその分なくなります。上に伸ばす拡張(ISO51200など)は押し上げているので、ノイズがそのまま大きくなります。どちらも、センサーが光に強くなったわけではないんですよね。
メニューでLやHと表示されたり、スペック表で「ISO50相当」という書き方になっているのは、規格どおりに測った数字ではないからです。あくまで相当品、ということです。
そして常用感度のいちばん下、一切増幅していない素の状態がベース感度です。ここがそのカメラの画質のてっぺんになります。
私が使っているX100VIで見てみると、常用がISO125から12800で、拡張がISO64・80・100と、上が25600・51200です。
つまりX100VIのベース感度はISO125で、ISO64は番外編のほうに入っています。
ちなみに前のモデルのX100Vでは、このISO125が拡張のほうに入っていました。センサーの画素構造が良くなって、ISO125を常用として出せるようになった、というのがX100VIでの進化点のひとつです。こういうところにセンサーの世代差が出るんですよね。
ここで注意したいのが、拡張の低感度です。
拡張のISO50やISO64は、ISO100より画質が良いわけではありません。
いま書いたとおり信号を引き下げているだけなので、ダイナミックレンジはむしろ狭くなります。ハイライトが粘らなくなって、白飛びしやすくなるんです。
キヤノンも取扱説明書で、拡張の低感度はダイナミックレンジがやや狭くなる、ライブビューで階調が見えていても撮影した画像では白飛びすることがある、とはっきり書いています。
数字が小さいから高画質、ではありません。
素のベース感度がいちばん高画質です。ここは覚えて帰っていただきたいところです。
風景を撮るときは、ISOを限界まで下げるのが基本だと思っています
これは人によると思いますが、私の場合は風景を撮るときだけISOの扱いが変わります。
普段のスナップは、さっき書いたとおりオートISOで上限だけ決めて、あとは任せています。
でも三脚を立てて風景を撮るときは、先にISOを常用の下限まで落とします。そこからF値とシャッタースピードを決めます。順番が逆になるんですよね。
理由は単純で、風景には時間があるからです。
山は逃げません。海も逃げません。
ブレ対策は三脚がやってくれます。だったら、ISOを上げて妥協する理由が一つもないんです。
むしろ、シャッタースピードが長くなるのは風景では得になります。
4秒で困ることはまずありません。1分流せば雲が動いて筋になりますし、波立っていた水面が鏡のように凪ぎます。ISOを下げたぶんシャッターが長くなって、それがそのまま絵になるわけです。
こうなると、低感度は画質のための選択ではなくなります。表現のための選択です。
ただ、これは逆も言えます。
1分も開けていると、雲は流れて形が変わりますし、水面の表情も消えます。目の前の雲の形が気に入って構えたのに、撮れた写真にその雲はいない。そういうことは普通に起きます。
だから長くすればいいという話でもないんですよね。あえてそう撮る手法もありますね。
その日の雲のスピードを見て、何秒まで開けるかを決めることになります。ここは撮りたいものがどっちなのか、という判断です。
そして風景はいちばんダイナミックレンジを使う被写体です。朝夕の空と、影に落ちた地面。あの明暗差を1枚に収めたいときに、ベース感度で撮れているかどうかで粘りが変わってきます。あとから暗部を持ち上げたときに、ノイズまみれになるか階調が出てくるかの差です。
ただし、ここでいう「限界まで」は常用の下限までです。
拡張のISO50まで落とすのは逆効果です。せっかくダイナミックレンジを稼ぎにきているのに、拡張に入った瞬間にそれが狭くなるので、やっていることが一周して裏返ります。
だからX100VIならISO125で止める。ニコンのISO64機ならISO64まで落とす。
その手前までが味方で、その先は敵です。
小言その1。ISO100より低い感度は、作る必要があったのか
ここから小言です。
答えから言うと、半分は必要でした。残りの半分はおまけです。
本物のほうがニコンです。
D850やZ7、Z8、Z9は、ISO64が拡張ではなく常用の最低感度です。つまり番外編ではなくて、ここがベース感度として設計されています。
そしてここが本当に効きます。計測サイトの数字でいうと、D850はISO64で約14.8段のダイナミックレンジがあって、ISO800まで上げると約11.3段まで落ちるデータがあります。
3段以上違うわけです。
風景を撮る人にとって、この3段は喉から手が出るくらいほしいものです。
空の明るいところを飛ばさずに、木の陰の暗いところも残せる。ニコンがハイエンド機でISO64を守り続けているのは、ちゃんと理由があるんですよね。
いっぽうで拡張のISO50は、日中にシャッタースピードを遅くしたいときに1段ぶん稼げる、簡易NDフィルターくらいの立ち位置です。
滝や川を流して撮りたいけれど明るすぎる、というときに持ち出す札です。画質のために使う札ではありません。
というわけで、低い感度を作る必要があったかというと、常用として作り込んだISO64には意味があって、拡張で足したISO50は便利機能、という整理になります。
小言その2。ISO64ではなくISO100のノイズの少なさを、もっとアピールすればよかったのでは
これは私もずっと思っていました。
高感度の数字を伸ばす競争ばかりが目立って、低感度側の気持ちよさは誰も宣伝してくれません。常用ISO204800です、と言われても、私はその感度で撮りません。一度も使ったことがないです 笑
ただ、よく見るとこれをやっているメーカーがいます。
やっぱりニコンです。
ベース感度がISO64まで下げられるということは、1回にたくさんの光を受け止められる器がある、という意味になります。器が小さければ、下げたくても下げられません。
つまりISO64という表記そのものが、すでにスペック自慢として機能しているわけです。
スペック表のいちばん左端に書かれた小さい数字が自慢になっている、というのは地味に面白い話だと思っています。分かる人にだけ刺さるアピールの仕方なんですよね。
でもこの64という数字が拡張の64だと勘違いしてしまう人も少なからずいそうですよね。
うちのカメラのISO100は、ベース感度が低いです!ダイナミックレンジあります!!!の方よかったのかなと思ったり。
小言その3。性能が上がっていったら、ISO1になってしまうのか
結論から言うと、そっちには進まなそうです。
ISOを下げるには、光をたくさん溜められる器が必要です。
感度が低いというのは、1枚撮るのに大量の光を受け止めてもあふれない、という意味だからです。器が大きいほど下の数字が出せます。
だからセンサーが大きいカメラ、画素ひとつが大きいカメラのほうが、低い感度を名乗れます。
中判が最低感度ISO80あたりから始まって、スマホがISO50を常用にできないのは、器の大きさの差です。
ISO1を実現しようとすると、今の100倍くらいの光を受け止められる器が必要になるそうです。
それはもう、カメラを巨大にしましょうという話です。
そしてもっと単純な理由があります。
需要が暗いほうにあるんですよね。
暗い場所で撮りたい人はたくさんいます。
日中の屋外でもう1段暗くしたい人は、NDフィルターを1枚買えば解決します。だからメーカーが力を入れるのは上の数字になります。
たぶん来るのは、常用の上限がとんでもない数字になって、スペック表の右端がどんどん長くなっていく未来です。そっちはそっちで、使わないんだよなあと思いながら眺めることになります 笑
風景撮影での画質ダイナミックレンジより、高感度耐性の方が需要があるんですね。
まとめ、そして次はノイズとの付き合い方の話をします
長くなったので整理します。
・ISOはフィルム時代の規格名がそのまま残ったもので、もともとはフィルム自体の性能を表す数字だった ・ISOを上げても光は増えていない。
信号の音量を上げているので、ノイズも一緒に大きくなる ・迷ったらオートISOにして上限だけ決める。上限は自分のカメラのノイズをどこまで許せるかで決める ・ノイズは残るがブレは消えない。
ISOを渋ってブレるほうがもったいない ・常用感度のいちばん下がベース感度で、ここがそのカメラの画質のてっぺん ・風景は三脚で時間が使えるので、ISOは常用の下限まで落としてから組み立てる
・長くなったシャッターは損ではない。1分流せば雲が筋になり、水面が凪ぐ。ただし撮りたかった雲の形は消える ・拡張の低感度(ISO50など)は高画質ではなく、ダイナミックレンジはむしろ狭くなる ・ニコンのISO64は常用のベース感度なので別物。
D850はISO64で約14.8段、ISO800で約11.3段 ・ISOを下げるには大きな器が必要なので、ISO1には向かわない
ISOは、分かってしまえばいちばん雑に扱っていい設定です。
F値とシャッタースピードを決めてから、足りないぶんを埋める。これだけです。
追記。ISOはイソなのか、アイエスオーなのか
書いていて思い出しましたが、これ、人によって読み方が違います。
私はアイエスオーと言っています。
いっぽうでイソと読む人もいます。辞書を引くと「ISO(イソ)」で載っていたりもするので、こちらが間違いというわけでもありません。
で、どっちが正解なのか。
実はここ、正解が一つに決まらない理由があります。
ISOは略語ではないからです。
International Organization for Standardizationの頭文字を取ると、普通はIOSになります。フランス語名で取ればOINです。言語ごとに略称がバラバラになるのを避けるために、ギリシャ語で「等しい」を意味するisosから取った短い名前を、そのまま団体の名前にしたという経緯があるようです。どの国でも、どの言語でもISO。そういう決め方をした名前なんですよね。
つまりISOは、最初から頭文字ではなく一つの単語です。
だからイソと読むのにもちゃんと筋が通っています。
英語圏の写真界隈では、アイソと読む人が多数派です。
ただ、日本のカメラの現場でいちばん通りがいいのはアイエスオーなのかな。
メーカーの説明動画でも販売員さんの口からも、だいたいこちらが出てきます。
YouTubeとか見ているとクリエイターさんでイソと言っている人も多数お見かけします。
まあ伝わればいいじゃない!
というわけで、私はこれからもアイエスオーで通します。
どちらで言っても怒られないので、言いやすいほうで大丈夫でしょう 笑




























ここだけ少し踏み込みます。「RAWなら低いISOで撮って後から明るくしても同じ」という話をときどき見かけます。ISO不変性と呼ばれる性質で、理屈としては近いのですが、これは機種によって成り立ち方が違います。完全に成り立つカメラはありませんし、検証記事の多くは、撮影時に適正なISOにしたほうがノイズも色も素直だという結論です。後から上げればいい、を前提にはしないほうが安全だと思っています。